2020年03月13日

パラダイムシフトが2つ…

世界中が、新型コロナ問題で大騒ぎになっています。
ついにWHOはパンデミック相当と認めたようです。

株価が米国⇒欧州⇒日本と連鎖し、崖から岩が落ちるように暴落しています。
原油価格の暴落も加わって、まるで世界恐慌の入口に立ったかのような騒ぎです。

新型コロナの感染拡大は一時的な株価問題では終わりそうもなく、この影響は何年も続くと思われます。
東京オリンピックも中止か延期になる、と考える人の割合は、調査によっては5割を超えているようです。

こういう大きな経済、社会変動によって、それまでの「常態」が変わって新しい状態が生まれることを「パラダイムシフト」と呼ぶようです。
今までの考え方や価値観が、大きく変わること、ですね。

日本の特許の分野でも、ちょっと気になる変化(パラダイムシフトの端緒になるかも?)がありました。
特許侵害に関する損害賠償金のことです。

新型コロナ問題が重大化し、政府が小・中・高校の臨時休校を「要請」していた2月28日、知財高裁(知的財産高等裁判所)で、重要な(私は、とても重要と感じています。)大合議判決がありました。
美容ローラーの特許侵害を巡り、美容機器メーカーのMTG(名古屋市)がファイブスター(大阪市)に5億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決です。

裁判所は特許侵害を認めて約4億4千万円の賠償などを命じ、賠償金額の算定方法についても判断枠組みを示しました。
原審(大阪地裁)判決での認容額は1億円台であり、請求額は5億円ですから、相対的には、かなりの高額判決と言えるでしょう。

特許侵害に関する損害賠償の金額については、これまで日本の裁判所は「安く/低く抑える」判決を繰り返してきました。
このため、日本で特許権を獲得することの意義が薄れ、海外企業では「日本はスルーする」という Japan Passing が広がっていました。

昨年、特許侵害の損害賠償額を引き上げる方向での特許法改正が成立していますが、今回の判決は、それと状況的にシンクロしているとも言えます。
さらに、
この特許法改正が審議されていたころ、知財高裁で特許侵害の損害賠償額を実質的に引き上げる判決(侵害者の「事情」の主張に基づく賠償額の減額を制限する判決)がありました。
これも、賠償額の実質的な高額化の流れとシンクロしているように感じています。

日本でも、適正な(今までのように安く抑えられていない)損害賠償額が認められる時代が来るかも?
…ということで、
これは日本の知財制度の「一つのパラダイムシフトかもしれない」と感じています。